中国でのVPN利用に対して、その違法性を気にする方は多いようです。
結論として、中国のVPN規制を理解するには主に3つのポイントがあります。
今回は、中国のVPNの規制や違法性に焦点を当てて、わかりやすく紹介します。
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中国深圳市在住の陳です。これまで約20種類のVPNサービスを使用し、その知識と経験から「中国VPNの陳先生」として知られています。
ここで提供する情報は、単なるネット上の情報の集約ではなく、実際の使用経験に基づいた事実情報です。皆さんのVPN選びの参考になれば幸いです。
中国のインターネット規制とVPNの関係
中国では厳格なインターネット規制が行われており、特定の外国のウェブサイトやサービスへのアクセスが制限されています。
この規制を回避するため、多くのユーザーがVPN(Virtual Private Network)を利用しています。
VPNはインターネットのトラフィックを暗号化し、別の国のサーバーを経由させることで、ユーザーが中国の規制を克服し、ブロックされたコンテンツへアクセスすることを可能にします。
しかし、中国政府はVPNの使用に対しても制限を設けており、非公認のVPNの利用を禁止する動きを見せています。
その結果、中国でのVPNの使用は法的な曖昧さの中で行われている状況です。
中国のVPN規制を理解する3つのポイント
中国のVPN規制について理解するには、以下3つのポイントを抑えるとわかりやすいでしょう。
- 法律上は違法とされているが、実際に犯罪として扱われることは少ないという矛盾点
- VPNの使用を禁止しないと公式に声明したことがある
- 実は外国人がVPN使用で実際に罰せられたことは一度も無い
一つずつ見ていきましょう。
法律上は違法とされているが、実際に犯罪として扱われることは少ないという矛盾点
中国でVPNを利用することは法律上では違法とされています。しかし、実際にはこの行為が犯罪として扱われることは稀です。
日本では、違法=犯罪です。しかし、中国では、違法≠犯罪ということがあります。
この中国特有の特徴を理解することが重要です。
わかりやすく解説するため、日本と中国の犯罪の違いについて書かれた文の一部を抜粋します。
中国では、犯罪の「質と量」が問われます。これに対して日本では、犯罪を純粋に「質」的概念でとらえています。たとえば、窃盗罪。中国で泥棒に遭って警察に通報したら、「いくら盗られたか」がまず問われます。一定の金額以上を盗らないと窃盗罪にならないのです。
これに対して、日本では「盗った」こと自体で窃盗罪が成り立ちます。大阪の中学生がコンビニエンスストアの電源から無断で携帯電話を充電したことで、窃盗罪として送検されたケースがあります。金額からいえば数円程度でも、日本では窃盗罪に問われるのです。中国では、少額の万引では警察は動きません。
一橋大学広報誌HQ vol.32 秋号(2011年10月)
現状では、VPNの利用は警察が動かない程度のものとみなされていると察します。
中国政府はVPNの使用を禁止しないと公式に声明したことがある
VPNを禁止する法律はある一方で、矛盾しますが、中国政府は過去にVPNの使用を禁止しないと捉えられる声明をしたことがあります。
実は2017年に中国政府が個人のVPN利用を全面的に禁止するという噂が流れたことがありました。
しかし、その後、VPNを全面規制するとの報道は正しくないというニュースが流れ始め、産経新聞も以下のように取り上げました。
中国工業情報省は13日までに、海外へのインターネットアクセスに広く使われている仮想私設網(VPN)接続をめぐり、政府が国営通信会社に対し、来年2月までに個人利用を停止するよう求めたと報じられている問題について、「個人利用の全面的な禁止は行わない」とする声明を発表した。
個人利用の全面禁止行わぬ 中国政府 VPN接続で声明 – SankeiBiz(サンケイビズ)
実は外国人がVPN使用で実際に罰せられたことは一度も無い
実は、これまで外国人がVPNを使用したことで罰せられたことは一度もありません。
中国におけるVPN使用の法的状況に関して、外国人が実際に罰せられた事例がないことの背景には、主に下記の2点が関係していると考えられます。
- 外国人に対して罰することは、政府の目的と必ずしも一致しない
- 国際的なビジネスや外交関係を優先している
そもそも中国政府がインターネットに規制を設ける主な目的が、情報を遮断して国民の思想を管理すること、海外のITビジネスに対抗して国産のITサービスを育成することにあるとされています。
このため、中国に滞在する外国人に対するインターネット規制を強化することは、政府の目的と必ずしも一致しない可能性があります。
その結果、中国に滞在する外国人へのVPN利用に対する厳格な取り締まりをしていないと推測されます。
また、中国政府は国際的なビジネスと外交関係を重視し、外国人のVPN使用を一定程度認識しつつも寛容な姿勢を保っています。
これらの要因が複合的に作用し、外国人がVPN使用で罰せられる事例がない状況を生んでいると考えられます。
一方で、中国国籍の方が罰せられた事例は数件あるようですが、罰金は500元(10,000円程度)と非常に少額の罰金だったようです。
VPNを使用しないことにもリスクが伴う
中国だけに限りませんが、VPNを使用しないことにもリスクが伴います。
日本政府はセキュリティの観点からVPN利用を推奨しています。
機密情報かどうかに関わらず、オフィスと電子データのやりとりを行う場合は、VPN等、通信経路を暗号化した状態でやりとりできる経路を用いるのが安全です。なお、インターネット経由での電子メールのやりとりにおいては、特に指定しない限り、暗号化は行われませんので注意してください。
総務省 テレワークセキュリティガイドライン第4版
VPNを使用しない場合、セキュリティ上のリスクが高まります。
VPNを利用することで、インターネット上での通信が暗号化され、より安全に情報をやり取りできます。
さらに中国の場合は、VPNを使用しなければ、中国政府に監視されたネットワークを常に利用することになります。
これにより、オンライン上の活動が監視され、プライバシーが侵害される可能性があります。
また、アクセスできる情報が制限され、検閲された情報のみが利用可能になります。
以上のことから、中国でのVPNの使用は、法的リスクとセキュリティ、プライバシーを守るための必要性のバランスを考慮する必要があります。
まとめ
今回、中国におけるVPNの規制に関して、まとめました。
中国のVPN規制を正しく理解するポイントは以下の3点です。
- 法律上は違法とされているが、実際に犯罪として扱われることは少ないという矛盾点
- VPNの使用を禁止しないと公式に声明したことがある
- 実は外国人がVPN使用で実際に罰せられたことは一度も無い
中国のあるニュース記事によると、中国大陸でVPNを利用する人は、保守的に見積もっても2,3千万人いるようです。
「保守的に見積もって」ですので、もっと多くの人がVPNを利用していることが想像できます。
中国人でVPNを利用する多くは、貿易など海外とビジネスを行う会社員、外資系企業の会社員、海外の論文を読む教授や研究員だそうです。
VPNの利用を禁止する法律がある中で、これだけ多くの人が利用しており、そしてそれを政府は認知しながらも規制を強化しないという、非常に曖昧な状況にあります。
このサイトでは、様々なVPNを紹介しておりますが、この記事で解説した内容を十分に把握した上でVPNを利用していただければ幸いです。